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2020年3月18日 (水)

笛を配る人

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――作为一位写作的人,希望下一代能够自由毫无挂虑地使用汉语(ひとりの物書きとして次の世代には自由に、何の心配もなく中国語を使えていてほしい)。

この件を紹介した台湾出身の作家廖信忠が自身のオフィシャルアカウントの記事の締めくくりにした言葉だ。

今回紹介するのは、既に全世界の問題となった感もある新型肺炎の震源地でもある武漢の病院の急診科(救急救命科)のリーダーであり、この新型肺炎の発生について武漢内の医師に最初に警告を発した人物、艾芬(アイ・フェン)への独占インタビューだ。

インタビューした雑誌「人物」は芸能人から市井の一般人まで様々な人へのインタビューで構成された雑誌だ。当サイトでも以前北京のバー街三里屯の花売りのおばさんのインタビューを翻訳したことがある(「生き証人が語る三里屯の20年」)。今回の武漢の新型肺炎騒動では暴れまわる財新や三联生活周刊などに比べればそこまでの特ダネを出していなかった「人物」が他誌を差し置いて渦中のこの病院の核心的人物の単独インタビューを取れた理由はわからないが、衝撃的といえばいいのか…翻訳のために読んでいても非常につらい内容だ。

この記事は3月10日朝に投稿され、長くとも2時間程度で削除された。聞くところによると掲載予定だった紙の雑誌はすべて取り下げ、定期購読者には返金措置となったらしい。

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それでも人々は様々な手段で転送を続け、当局はいちいちそれを消しというイタチごっこの末に、英語や日本語を始めとする様々な言語、縦読み、右から読む、モールス信号、16進法、絵文字…などありとあらゆる方法でその規制から逃れようという動きが起こった。ざっと見つけられただけでこの数になったので、貼ってみよう(クリックで拡大)。この数で騒動とその中に込められた怒りがわかる…というと言い過ぎかもしれないが。

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この(絵文字版や甲骨文字版などそのいくつかは正直大喜利にしか見えないような)民衆と当局側とのやり取りもまたニュースになった(例えば朝日新聞「記事削除に反発、絵文字やQRコードで拡散し抵抗 中国」)。しかしこれは笑い事ではない。それを鋭くえぐったのが冒頭に引用した作家廖信忠の言葉だ。

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上記の朝日の記事もそうだが、結局当局がそこまでして隠したかったこの話の本筋である艾医師の証言は十分に紹介されているとはいいがたい。絵文字版は確かに見た目は面白いが、言ってしまえば単なる遊びだ。かといって日本語でほかにきちんと紹介されている様子もない…ということで自分で訳出することにした。

文章全体から、200人のスタッフを率いて戦った艾医師の内心の寂寥が伝わってくる。副院長3人が感染するなど恐らく病院全体の組織として正常に機能していないとはいえ、実名でここまでの内容を言ってしまってはこうした組織内での今後の立場はないだろう。おそらく彼女はこのインタビューをもって職を辞する覚悟だったのではないかと思われる。こうした人物がその後どういった道をたどるのかわからない。ひと時の休息の後、せめて幸福な人生を送ってほしいと思うのだが。

※本記事中には多くの医療用語が登場するが、僕自身医学方面の知識があるとはいえず、またストーリー全体との関連も薄いため、あまり追い込んで調べていない。正確性については(必要であれば)各自確認してほしい。

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